少しブームとかからは遅れたけど
amazonプライムでアニメ「クズの本懐」をすべて見ました
好き嫌いははっきりとわかれそうなんですけど、自分はとても面白かったです
見て良かったと思いました
ネタバレを多少しながら、感想を書きたいと思います
欲にまみれた純愛物語
wikipediaよりあらすじ
安楽岡花火と粟屋麦は一見理想の高校生カップル、しかし2人とも他に好きな人がいることを了解しながら一緒にいるのだった。花火は幼いころからお兄ちゃんと慕っていた鐘井鳴海を、麦は昔家庭教師をしてくれた皆川茜が好きだった。それぞれ花火たちの高校の新任教師になった鐘井と茜は次第に距離を縮めていく。それを見守る花火と麦はお互いに似たところがあるのを感じ、お互いを好きにならないこと、どちらかの恋が実ったら別れること、そしてお互いの身体的な欲求にはどんなときでも受け入れることを条件に付き合っている振りをすることになる。
主人公に憧れの人がいて、願いは叶わないとわかっていてもその気持ちが抑えられないというのは、現実でもマンガでもよくあることだと思う
本作の主人公の花火と麦にも憧れの人がいた
普通と違うのは、この二人がお互いの傷を癒すために付き合い始めたこと
当然、普通の恋人とも、セフレとも少し異なる
やっていること自体はセフレと変わらないのだけど、心は互いに別の人のことを思っている
各キャラクターの行為自体はタイトルの通りクズそのものだと思う
欲に忠実で、我儘だ
でも、その根底にある気持ちは相手が欲しいという非常にシンプルで純粋なものだったように思う
「相手が欲しい」と言っても
・相手の気持ちが欲しい
・そのままの相手が欲しい
・相手が欲しがっているものが欲しい
などキャラクターによって、欲しがり方が異なっているのが面白かった
各キャラクターの関係性や思考は非常に打算的で
普通の恋愛マンガやアニメではあまり好かれないところが多かった
ただこの作品では逆にそこが魅力的で
なんとかして好かれたい、ダメなら慰めてほしい
心情や行動がリアルだとは思わないけど
弱いところ、人に見せたくないところ
そういう人間の醜い部分を惜しげもなく晒していたところに
僕の心は強く惹かれた
ストーリーとしては花火と麦二人の主人公を軸にしながら
花火のことを好きな友人 絵鳩 早苗
麦のことを好きな幼馴染 鴎端 のり子
といった魅力的なサブキャラクターとの関係が入り混じりながら
自分の気持ちを思い悩み、どう進むのか考え
傷つけ傷つけられながら、自分の思いをなんとか消化していく
そんな感じの少し重苦しい感じの展開をモノローグを中心として淡々と進んでいく
ストーリーはいろいろなキャラクターからの視点が入れ替わりながら、少しずつしか進展しないし、あっと驚くイベントも特に何もない
どこにでもありそう(やや盛ってるとしても)な日常が刻々と進んでいく中で
気持ちだけが目まぐるしく回っているようで、何も進歩していなくて…
文学的な進行の仕方をするアニメでした
結局、当初の思いが成就したのは鐘井 鳴海だけだったけども
(皆川 茜は自分の気持ちに気づけたってところで、幸せになってるけど)
皆、青春時代の甘くて苦い経験として、思い出の中にそっとしまって生きていくんだろうなと思った
普通の恋愛マンガとは違って、好きな人と結ばれるような純粋なハッピーエンドではなかった
まあ、でもこうなるしかないよな、って気持ちと
幸せになってほしかったな、って気持ちが入り混じっている
でもこのエンドでよかった、今はそう思っている
印象に残ったこと
一途な最可
一番のお気に入りは最可のエピソード
自分にとっての王子様麦は絶対に自分を選ばない
それがわかっていても、自分が好きな相手とデートができる悲しいことだけど、それを人生最高の思い出として生きていく
人生最高の夢の中でずっと生きていけるのなら、それでいい
相手のためなら、自分のすべてをささげてもいい
それほど好きだ
そういう悲痛な覚悟が見ているこっちの胸を突き刺した
体を差し出しても、麦は自分に振り向かない
他の女の子にするように求めてくることもしない
特別扱いされてるから、自分の望むものは手に入らない
そう気づいて、誰よりもまっすぐ相手のことを見ていた最可の恋は終わりを告げた
登場人物のなかでも最可の気持ちが一番自分に近しいこともあって
かなり感情移入しながら見ていた
特に叶わなくてもともに過ごした時間を一生の思い出にして生きていく姿勢
相手のためにすべてを差し出してもいい覚悟
昔、初めて恋したときの自分を見ているようでつらかった
皆川 茜の改心と幸せ
結局、一番の勝ち組はこの人かもしれない
最終的に遅れてきた初恋をして、幸せをつかんでいるからだ
初めは人の心を弄ぶ性悪女として登場し、この人を打倒する感じかと思ったけど
だんだん内面が明らかになるにつれて、非常に魅力的なキャラクターだと思うようになった
相手から搾取したいという気持ち自体は共感できるしね
鐘井に惚れた理由はなんとなくわかる
結局、「自分」をまっすぐ見て受け入れてくれた初めての人だったからだろう
自分の価値の基準が他人に依存していた茜にとって、自分のことだけを愛してくれて
自分のことだけを見てくれて、ありのままの自分を受け入れてくれた初めての相手だっただろうから
麦は内面に踏み込んだ初めての相手だったかもしれないけど、結局は自分好みに相手を変えたいと望んでいただけだしね(最後そうじゃないと気付いたけど)
本作でクズ中のクズだった茜だけど、なんか幸せになってよかったと思う
絶対的に肯定してくれる無償の愛を注いでくれる人がいて、そういう人と過ごしていける幸せを手に入れたのだから
「浮気をする」と言っていたけど、たぶんもうしないんだろうなと思う
デートくらいはするかもしれないけど、ホテルに連れ込んだりはしないだろうし
心はずっと鐘井のところにあるのだろう
花火と麦
お互いの不満を埋めるための疑似恋愛関係だった二人
結局二人とも失恋して、契約は白紙に戻ってしまった
普通の恋愛マンガなら、最終話でくっつくんだろうと思う
けど、このアニメではそうはならなかった
お互いの弱いところを知っているし、気持ちが0だと言えばうそになる
付き合えるか付き合えないかで言えば前者だろうし、お互いがお互いを大事に思っていて、特別な相手だと思っているのは間違いない
でも、今付き合ったとしてもそれは恋愛なのか、と言えば違うだろう
おそらく、当初の傷の舐めあいの延長線上に他ならない
一緒にいると心地よい関係だけど、恋ではない
だから別れた
新しい本当の恋を探すには不要な関係だから
ひょっとしたら、いつか本当の恋人としてヨリを戻すことがあるかもしれない
でも、そうなるためにも一旦、今の欲を埋めあうだらだらとした関係性をリセットして、また0から始めなければならない
前向きだけど、悲しい別れ
ハッピーエンドだけどビターエンド
茜が麦の思いを突っぱねていたら、付き合っていたんだろうか?
おそらく、どちらにせようまくはいかなかったんじゃないかと思う
歪な始まりの関係は、正常な関係に戻すためには終わりを迎える必要があった
これからの二人に幸あれって感じ
立花の思い
初めはエロ半分話題性半分で見始めた
だけど、一気に引き込まれて2日で全部見終わってしまった
全体を通じて、すっきりとする展開はない
新開誠の「秒速5センチメートル」のようなウェットな重苦しい展開ばかりだ
でもそこがよかった
僕はハッピーエンド至上主義者なので
恋愛ものはヒーローとヒロインが両想いになって、幸せな未来を暗示して終了
みたいなべたべたの王道展開が好きだ
僕がこういう王道展開が好きなのは、自分は手に入れられない理想の物語だと心の底では理解しているからだ
僕の本性はクズの本懐のような打算的でどうしようもないクズで臆病なところがある
だから逆にどっぷりとはまってしまった
なぜか最終話を見て号泣してしまったし
キャラクターの不器用だけど純粋で熱い思いは
恋ってこういうものだったなあ、と自分の中で忘れていた感じを思い出させてくれた
相手が好きだからこそ、なんとか振り向いて欲しいという思いも
自分の価値を見出すために何でも欲しいと思うのも
相手に付け込んででも心を通わせたいと思うのも
全部、自然な感情だし、非常に共感できてしまったのが
僕がこのアニメに高評価をつけてしまう理由だ
多分、嫌いな人は本当にこのアニメは受け付けないと思う
ストーリーだったり、細かいあら探しとかしてしまうだろう
でも僕は見てよかった
心の底からそう思える
クズの本懐を見終わって、思ったのは恋愛をしたいなということ
それも打算的で性欲先行の恋愛じゃなくて
初恋のときのような相手が好きだから好きという感じの熱い思いだけがあるやつ
初恋は実らなくて、そのあと幸運にも何人かと付き合ったけど
身が焦げるような思いは自分の中になかった
久しぶりにそういう思いをしたい
25歳のおっさんが何言ってんねんって話だけど、相手のことが好きで好きでたまらなくて心が痛い、そういう苦しみを味わいたい
そしてその思いが叶えば、幸せだろうな
年甲斐もなく、そんなことを考えた
書くことは決めてたはずなのに、また書き始めたらぶれぶれになって
中身もぐっちゃぐちゃになってしまった
それだけ心を揺さぶる作品であったことは間違いない